第2回「高峰譲吉プロジェクト科学実験教室 ~麹菌の可能性を探る~」開催の報告
9月6日(金)、東京都北区堀船中学校にて昨年に続いて2回目の「高峰譲吉プロジェクト科学実験教室 ~麹菌の可能性を探る~」が行われました。昨年は台風直撃で天候に恵まれませんでしたが、この日は、真夏日で30度を超える暑い日差しとなりました。
この科学実験教室は、石川県の金沢工業大学応用バイオ学科の生徒による「未来の高峰譲吉博士は君だ!発酵産業活性化プロジェクト」の一環で、小中学生・高校生を対象に科学教室やイベントを通じて、高峰博士の研究内容や功績を伝え、未来の高峰博士を育成することを目的としています。実験教室以外にも、講演会やサイエンススクール、料理教室など多岐にわたるイベントを2014年から継続しており、研究会もイベント開催に度々協力しています。
高岡市、金沢市の北陸地域と堀船中学校との交流行事は3年目となりました。
これまでの活動の様子はこちら。
実験教室は午後一番の授業が充てられており、早目についた事務局はお昼の給食を頂きました。メニューも日々改善されており、バランスを重視した内容でした。昼休みには元気に遊ぶ生徒の姿も見られました。
今回の実験教室では、中学生が大学生とともに高峰博士が実際に行った実験を体験し、麹菌の可能性について学びます。
授業は、「国の○○は?」というおなじみのクイズから始まります。
国歌や国花、国鳥などを聞いてゆき、最後に「国菌」を尋ねるのですが、昨年はなかなか答えが出ませんでした。しかしながら、今年はなんと一発で「麹菌」と答えた生徒がいました。素晴らしい!
実験は下記の2部構成です。
・麹菌による出現酵素の定性実験
※麹菌の生育過程において生産される酵素(アミラーゼやプロテアーゼ)の作用についての実験
・アミラーゼによるグルコースの定量実験
※酵素の作用について数値的に計測し、麹菌の生産する多様な酵素の力についての実験
定性実験とは物質が何かを確かめることで、定量実験は物質の量をはかることです。堀船中学校2年生は2クラスですが、人数の関係から1クラスごとに別々の実験を行い、後日、1組と2組で実験内容と結果を共有し教えあう時間を設けることになりました。
金沢工大の学生たちを指導する相良准教授から聞いた話では、今回の実験で使用したピペットマン(ピストンを押し下げて排出した空気と同量の液体を吸入・吐出を行う、微量液体分注器)は、フランスのギルソン社のもので、公的な研究機関が実際に導入している高価な精密機械だそうです。大学で使用しているものを今回の実験教室のために特別に持ち出した、とのことでした。
こういった器具を実際に使用する機会は大変貴重で、「若者の科学離れ」が大きな問題となっている現在、こうしたイベントを通じて、生徒たちが科学への興味を深め、新たな発見や理解へと導かれることを願っています。
また、同日、お隣の板橋区で「渋沢栄一と金沢の関わり -高峰譲吉との交友を中心に-」というタイトルで、「かなざわ講座」が開催されました。講師は、金沢ふるさと偉人館の前副館長、増山仁氏です。研究会も情報交換でいつもお世話になっております。
板橋区は、加賀藩の広大な下屋敷(およそ21万坪)があったことが縁で、金沢市と友好交流都市の協定を結んでいます。下屋敷は、藩主・前田家の別荘として利用され、参勤交代の時は、衣装替えを行い、家族の対面の場として利用されていました。下屋敷の中には石神井川が流れ、田畑もあり作物を作っていました。
また、その縁は地名にも表れています。石神井川には「金沢橋」や「加賀橋」が掛かり、周辺には「加賀公園」があります。このあたりの地名は「加賀」であり、加賀中学校の校章は、前田家の家紋である梅鉢紋が使われています。板橋区のHPに金沢ゆかりの地マップがありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
こうした縁から、板橋区は金沢市との連携事業として毎年「かなざわ講座」が行われており、今回は60名ほどが参加されました。
今年は渋沢栄一肖像の新一万円札が流通し始めたこともあり、増山氏は栄一翁と譲吉の関係に焦点をあて、東京人造肥料会社設立や、譲吉の没後、日本で行われた追悼会にて総代を務めた栄一翁のあいさつなどを紹介されました。参加者の中には、詳しい方もいたようでうれしい限りです。
今回は紹介しきれませんでしたが、譲吉は東京都北区とも深い関わりがあります。改めて紹介いたしますので、ぜひお楽しみに。
記事作成:令和6年9月24日/文責:事務局