「高峰譲吉プロジェクト科学実験教室 ~麹菌の可能性を探る~」の開催

9月8日(金)、東京都北区にて「高峰譲吉プロジェクト科学実験教室 ~麹菌の可能性を探る~」が行われました。

これは石川県の金沢工業大学の学生が、北区堀船中学校の2年生を対象に麹菌発酵をテーマにした科学実験教室を行う交流プログラムで、世代を超える共同実験を通じて学習理解を深化させ、実験技術と考察力を高めることを目指しています。また、高峰譲吉が実際に行った実験や発明した酵素剤の利用を通じて、高峰譲吉への興味と理解を拡大させることを期待しています。

昨年は、渋沢栄一ゆかりの地・東京都北区と高峰譲吉生誕の地・高岡市ということで、堀船中学校と福岡中学校(高岡)の二校でオンライン交流会が行われましたが、それに続いての開催となりました。オンライン交流会の詳細はこちら。

金沢工業大学には、バイオ・化学部応用バイオ学科があり、「未来の高峰譲吉は君だ!発酵産業活性化プロジェクト」を運営しています。郷土の偉人である高峰譲吉の行った研究から、地場産業の一つである発酵産業について学び、高峰譲吉の功績を世間に広めることを通じ、次の世代の高峰譲吉博士を育成することを目的としています。講演会やサイエンススクール、料理教室、実験教室など多岐にわたるイベントを2014年から継続しており、研究会もイベント開催に度々協力しています。

この日はあいにく台風直撃となり北陸新幹線が走るのか不安がありましたが、2,3年生を中心とした8名の金沢工大メンバーと相良准教授は、金沢駅を朝7時半に出発し無事定刻の到着となりました。自分たちで作成した資料や、観察用の実験例、実験道具などをセッティングし、実験教室に備えます。

実験の内容は「定性実験」と「定量実験」の2種類です。定性実験とは物質が何かを確かめることで、定量実験は物質の量をはかることです。堀船中学校2年生は2クラスですが、人数の関係から1クラスごとに別々の実験を行い、後日、1組と2組で実験内容と結果を共有し教えあう時間を設けることになりました。

各クラスを6班(1班4~6名)に分けて、たとえ話やクイズを交えながら、実験は進んでいきます。

金沢工大
金沢工大
各国には国の歌、花などが存在しますが、日本の花は何だと思いますか?
桜!
堀船中
堀船中
菊!
堀船中
堀船中
金沢工大
金沢工大
おぉ、素晴らしい。それじゃあ、国の鳥は何かな?
キジ!
堀船中
堀船中

「キジ」が即座に回答されたのにはびっくりしました。しっかり勉強していますね!

金沢工大
金沢工大
では、同じように日本を代表する「菌」、いわゆる「国菌」は何だと思いますか?
・・・
堀船中
堀船中
金沢工大
金沢工大
答えは、譲吉が活用した「麹菌」です。

麹菌のことを知っている生徒はほとんどいないようでした。今回の実験で身近な存在になっていたら嬉しいです。ヨウ素液を取り出したときは「病院のにおいだ」「イソジン(うがい薬)のにおいじゃない」とお決まりの反応があり、微笑ましい様子でした。

実際に行った実験の概要は以下の通りです。

【高峰譲吉博士の研究から学ぶ:麹菌による出現酵素の定性実験】

材料・実験器具
でんぷんプレート(各班1枚)、カゼインプレート(各班1枚)、ヨウ素(固体)、酵素液(コムギフスマ、YPD、YPS、タカジアスターゼ(第一三共胃腸薬)、※事前準備)、キムワイプ、薬さじ、廃液入れ、油性ペン、ドライヤー、スポイト

〇アミラーゼ系酵素定性実験
1.でんぷんプレートを4分割する
2.酵素抽出液をスポイトで1滴ずつ添付(麹菌培養コムギフスマ抽出液、YPD抽出液、YPS抽出液、タカジアスターゼ抽出液)
3. 5分間ドライヤーで乾燥
4. ヨウ素をプレートの蓋の部分に入れ、5分後プレートの観察
5. 実験結果の確認と原理の説明

【高峰譲吉博士の研究から学ぶ:アミラーゼによるグルコースの定量実験】

材料・実験器具
でんぷん溶液入り10mlチューブ(各班3本)、酵素液(コムギフスマ、YPD、YPS)、※事前準備)、グルコース試験紙(各班3本)、キムワイプ、グルコース試験紙標準変色表、水

〇グルコースの定量実験
1.調整済みYPD、YPS、小麦フスマ抽出液とデンプン溶液を配布
2.デンプン溶液3本に各抽出液を入れ、体温で数分温める
3.数分保温後、グルコース試験紙を各抽出液に浸し、取り出す
4.試験紙をキムワイプに置き、試験紙の色の変化を観察
5.グルコース試験紙標準変色表よりグルコース濃度を求め、希釈系列に応じて計算
6.グルコース量を確認する(各班でデータを取る)
7. 実験結果の確認と原理の説明

 

また、実験後に配ったアンケートでたくさんの感想をいただきました。「若者の科学離れ」が大きな問題となっている現在、このような実験教室が行われることは、泉下に眠る高峰博士もさぞお喜びのことと思います。このイベントを通じて、生徒たちが科学への興味を深め、新たな発見や理解へと導かれることを願っています。今後も、当研究会は多くの若者のため、このような行事を積極的に支援していきたいと考えています。

【アンケート抜粋】

  • 学校では教えてくれないことを学べてよかった
  • もっとたくさん実験したかった
  • 普段やらないことをした、たのしかった
  • しっかり理解して話を聞くことができた
  • 今まで知らなかったことを知れてよかった
  • 細菌の種類が150万種以上あることに驚いた
  • それぞれの実験結果を比較したことが興味深かった
  • もう一度高峰譲吉の本を読もうと思った
  • 100年以上使われている薬を2つも発見した高峰博士はすごいと思った
  • 大学生と楽しく実験できて面白かった
  • 高峰譲吉がすごいと思った
  • 綿棒ででんぷんプレートに塗るのが難しかった
  • 実験しながら説明をしてくれてわかりやすかった
  • 菌がでんぷんを分解する力を持っていて驚いた
  • はっきり色が変わってすごかった
  • 大学生が様々なことを教えてくれて優しかった
  • 高峰譲吉博士が実験していたものを実際に見たり作ったりしたことが楽しかった
  • 高峰博士のことをもっと調べてみたい
  • 高峰譲吉さんが同じ実験をやっていたことを知れてよかった
  • 麹菌という単語を今日初めて聞きました
  • また来て面白い実験をしてほしい
  • めったに経験できないことができてよかった
  • 本物の菌を初めて見た
  • いつもと違う実験ができてよかった
  • 新しいことを知ることができてよかった
  • 金沢に行ってみたい
  • 日本を代表する菌があると知って驚いた

記事作成:令和5年9月26日、文責:事務局

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です