高岡・黒部宇奈月にて講演会

10月2日、3日に北陸地方2か所にて講演会を行いました。

2日は高岡市の商工会議所ビル、3日は宇奈月温泉の黒部市芸術創造センター セレネにて開催、それぞれ様子を報告いたします。

  • 北陸新幹線・新高岡駅で下車

高岡商工会議所ビルには高峰博士の別荘であった松楓殿の一部が移設され2020年3月より一般公開されています。2022年は高峰博士の没後100年ということもあり、新たに未展示であった壁画や欄間などを加え、展示スペースを約2倍に拡張しました。

お披露目のセレモニーがこの10月2日に行われ、講演会は高峰譲吉博士没後100年記念フォーラムとして同時開催となったのです。
セレモニーには、角田市長や高峰譲吉博士顕彰会の会長、教育長、地元の橘衆議院議員など多数の方が参加され、研究会の清水理事長もテープカットを行いました。

  • テープカットの様子、左から坂林高岡市議会議長、塩谷商工会議所会頭、角田市長、橘衆議院議員、清水理事長

新展示の中には、皇族の久邇宮邦彦王(くにのみやよしひこおう、香淳皇后の父)ご夫妻が松楓殿に滞在したときに使用された一対の椅子がありました。
男性、女性に合わせてわずかにサイズが異なるもので、時代を感じさせます。

さらに、高岡市への寄贈品を全てデータベース化し、手軽に閲覧できるようにしたタッチパネル式のディスプレイは、準備に1年がかりだったそうです。
貴重な資料であり、ぜひ若い人たちにも観てほしいと思います。

  • 清水理事長による「バイオテクノロジーの父 高峰譲吉」、高岡商工会議所ホールにて

講演会は、清水理事長による「バイオテクノロジーの父 高峰譲吉」と高岡市美術館の村上館長による「万国博覧会の歴史にみる松楓殿」 の二本立てで、約80名が参加されました。

終了後の質疑応答も盛り上がり、「高峰をNHKの大河ドラマで取り上げてほしい」、「司馬遼太郎が小説に書いてくれたらよかったのに」という要望や「小泉八雲と高峰は万博で会っていたのか」、「寄贈された展示物の保存方法について」など鋭い質問がありました。

小泉八雲とはラフカディオ・ハーンのことで、高峰が事務官として派遣されたニューオーリンズ万博(1884)に若かりし小泉八雲が通い詰めていたこと、そしてそこで日本の文化に魅せられたことが切っ掛けとなって、後年彼が来日したという話に前回の講演でも清水理事長が触れました。

1884(明治17)年4月19日に政府はニューオーリンズ万国博覧会への参加を決定し、急ピッチで準備が進められました。一カ月後の5月21日には現地の事務官として、高峰譲吉(農商務省御用掛准奏任)、玉利喜造(駒場農学校助教授)を任命、9月28日に現地に向けて出発させました。その後、10月25日に服部一三(東京大学幹事)も事務官に任命されましたが、小泉八雲の来日を支えたのは高峰と同様に政府より派遣された服部でした。

  • 高峰譲吉の辞令 出典:国立公文書館

現地の展示分野担当の違いなどから小泉八雲との交流は服部一三が中心だったと思われますが、同じ時期に同じ空間にいて、高峰と小泉八雲の面識がないとは考え難いです。

晩年、高峰は小泉八雲について下記のように語っています。

「政府は日本に利益ある紹介者を優遇するの途を設けられたき事。多くを言わないが、往年、日本の美点を紹介すべく英文著書を公にせられた彼のラフカディオ・ハーン氏が、偏狭なる文学者等に容れられないで、不遇に終わられた。その人に対して国家から何の恩典もなかったことの如きは、決して誉められないように思う。」

引用:塩原又策 『高峰博士』 1926年 83ページ

しかし、残念ながら両者が確実に会っていたという文献や資料は今のところ見つかっていません。
ぜひ資料をお持ちの方、何かご存じの方がいましたら、研究会までお知らせください。

 

富山地方鉄道・宇奈月温泉駅前。温泉の源泉が噴き出しています。

 

さて、翌日は黒部市芸術創造センター セレネで講演会を開催しました。

黒部川上流にダムや発電所をつくる過程で開発された宇奈月温泉は、2023年に開湯から100周年を迎えます。
ちなみに泉源は温泉街から約7km上流の黒薙と呼ばれるところです。現在宇奈月には10軒のホテルがあり、秋の行楽シーズンということで賑わっていました。

  • 宇奈月温泉街の全体図

しかしながら、黒部電源開発事業の発端が高峰の着想によることをご存じの方はまだまだ多くありません。
講演会は平日の開催にも関わらず観光ガイドを行っている方や旅館の女将さん達など、地元の方を中心に約40名が参加され、用意した席はほぼ満席となりました。

  • 2022年4月以前は「宇奈月国際会館」と呼ばれていました。

今回は1時間半の長丁場で内容の濃い講演となりましたが、皆さん興味深く話を聞いておられました。
ぜひ観光でいらしたお客様にも宇奈月と高峰の関係などをこぼれ話としてお伝え頂けたら嬉しいです。

 

記事作成:令和4年10月26日 文責:事務局

 

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