高峰譲吉が全米発明家殿堂入りを果たしました!

2024年5月9日、ワシントンD.C.で全米発明家殿堂のセレモニーが開催され、高峰譲吉が殿堂入りに選出されました。すでに内定が出ていることなどは、一部で報道されていましたが正式な入会式が完了しましたので、ご紹介します。

「全米発明家殿堂」(The National Inventors Hall of Fame) とは、「人間的、社会的、経済的進歩を可能にする偉大な技術的進歩を担う人々を称える」ことを目的とし、1973年に設立された発明家と発明品のための非営利団体です。メインスポンサーは米国特許商標庁で、ワシントンDCの本庁舎内に殿堂ミュージアムが開設されています。

この選出は存命者ばかりではなく、歴史上の発明家も選ばれており、トーマス・エジソンやニコラ・テスラ、スティーブ・ジョブズなども殿堂入りしています。本年は存命者や歴史的人物含めて15名が選ばれました。

「殿堂入り」するためには、以下の条件があります。

✔その発明について訴訟や論争がない完全な米国特許を取得していること
✔その発明が国家の福祉に貢献していること
✔その発明が科学および芸術の進歩に貢献していること

全てを満たした候補者の中からさらに選考されます。

ちなみに、これまでに殿堂入りした日本人は、以下の方々です。

遠藤章 -2012年殿堂入り、脂質降下薬スタチン類の発見と開発
中村修二 -2015年殿堂入り、青色LEDの開発
浅川智恵子 -2019年殿堂入り、視覚障害者用ウェブ読み上げ技術

なお、浅川さんは宇宙飛行士・毛利衛氏の後任として、日本科学未来館の2代目の館長を務めています。

今回、高峰譲吉が選出された理由はこちらのページ(英文)で詳しく紹介されていますが、以下意訳して抜粋します。

2024年全米発明家殿堂入りを果たした高峰譲吉は、バイオテクノロジーのパイオニアであり、アドレナリンの医療への応用につながる研究を行いました。高峰は20の米国特許を取得し、産業の発展に寄与するのみならず、日米の文化的に大きなインパクトを築き、不朽の遺産を築き上げました。

・タカジアスターゼの発明と特許取得
麹菌の酵素からタカジアスターゼを発明し、1894年に米国特許を取得しました。
これは恐らく微生物酵素に関する世界初の特許であり、米国で初めて商業生産された微生物酵素でもあります。

・アドレナリンの抽出結晶化に成功
1900年に世界で初めてアドレナリンの単離と結晶化に成功し、商標とともにプロセスに関する特許を5つ取得しました。
アドレナリンは心停止を含む心臓疾患、呼吸器疾患、アナフィラキシーのような生命を脅かすアレルギー反応の治療など、幅広い用途で使用され、多くの命を救っています。

・文化的なインパクト
医学への多大な貢献の後、その成功を社会的な活動に注ぎました。
日米の懸け橋となるために、いくつもの民間団体を創設するとともに、東京からワシントンへ桜の寄贈を実現させました。今も毎年春に開催される全米桜祭りは、日米友好の象徴であるこの美しい桜を愛でる大勢の人々で賑わっています。

こうした、功績が選出の理由となったようです。
先に挙げた条件を見事に満たしていますね!

とはいえ、高峰博士が亡くなったのは1922年です。
100年以上経って選出されたのはなぜでしょうか。

近年、コロナワクチンの副作用で起こり得るアナフィラキシーショックに対し、アドレナリン製剤(エピペン)が効果があることが実証されています。
ワクチンは世界規模で行われたので、アドレナリン製剤もそれに合わせた規模で必要となります。
この薬は、高峰博士が世界で初めて抽出に成功し、特許(1901年US Patent No .730,176を含め全世界)を獲得した「アドレナリン」が主成分です。

こうした関連が改めて評価されたのかもしれません。

全米発明家殿堂は、殿堂入り選出のプログラムを段階的に次世代の発明家育成につなげることを目的としています。

ステップ1:世界を変えた発明家を殿堂入りさせる。

ステップ2:彼らのユニークな発明の道のりについて学び、発表する。

ステップ3:殿堂入りした人々のストーリー、洞察、情熱をSTEM教育プログラムに反映させる。

ステップ4:インパクトのある実践的な経験を通して、次世代の発明家の可能性を引き出す。

殿堂入りした人物には展示スペースが用意されるようで、実は先方の担当者から展示物の内容について研究会に問い合わせがありました。当研究会の理念である「科学技術の振興を図る活動」とも一致していますので、引き続き活動の応援をしていきたいと考えています。

ワシントンD.C.を訪れる機会がありましたら、ミュージアムにぜひ足をお運びください!

 

記事作成:令和6年5月9日/文責:事務局

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です