『高峰譲吉――トライ、トライ、アゲイン』刊行のお知らせ

このたびミネルヴァ書房の「ミネルヴァ日本評伝選」の一冊として、木村昌人氏による高峰譲吉の評伝『高峰譲吉――トライ、トライ、アゲイン』が刊行されました(2026年5月、280頁、本体2,800円)。研究会として、ここにお知らせするとともに、広く一読をおすすめしたいと思います。

当研究会の会員でもある著者の木村昌人氏は、渋沢栄一記念財団の研究部部長・研究主幹などを歴任した、近代日本の対外関係史の泰斗です。その経歴が示すとおり、本書は高峰譲吉を「化学者」「実業家」という従来の枠だけでは捉えません。タカジアスターゼの発見やアドレナリンの結晶化といった科学者としての業績はもちろん丁寧に描かれますが、本書がとりわけ光を当てるのは、高峰のもう一つの顔――民間外交家としての姿です。

なお本書の刊行にあたっては、当研究会も執筆過程で資料の提供や内容面の確認に協力しました。高峰譲吉の生涯を後世に伝えるという研究会の目的にかなう一冊が世に出たことを、関係者として喜ばしく思います。

高峰は、日露戦争下の対米広報、日米実業団の相互訪問、そしてポトマック河畔への桜の寄贈、さらには国際通信社の創設まで、国家間の関係を民間の側から支える「インフラ」を次々と築こうとしました。本書はそれを、思いつきの善意ではなく、一人の人物が生涯をかけて取り組んだ意志的な事業として描き出します。「日米親善外交の”発明”」という本書の表現は、まさにこの点を言い当てたものです。

なぜ、いま『高峰譲吉』を読むべきなのか。理由は二つあると考えます。

一つは、本書が高峰の歩みを、成功だけでなく挫折も含めて描いている点です。書名の「トライ、トライ、アゲイン」は、高峰が講演で語ったと伝えられる言葉です。渡米後のピオリアでの苦闘や、相次ぐ災難。本書はそうした失敗の局面にも丁寧に筆を割きます。だからこそ、その先に築かれた数々の業績が、単なる才能の結果ではなく、何度でも挑み直す意志の産物として立ち上がってきます。異国で道を拓いた一人の人間の歩みは、立場や時代を超えて、いまを生きる私たちに届くはずです。

もう一つは、本書が高峰像を一段階更新した評伝であるという点です。発明家・実業家としての高峰は知られていても、民間外交家としての全体像をこれだけまとまった形で読める書物は多くありません。高峰譲吉という人物に関心を持つ方にとって、本書は出発点としても、また知識を整理し直す一冊としても、確かな価値を持っています。

国家間の結びつきを民間が支えるとき、何が必要なのか。一世紀前にその問いに向き合った一人の日本人の生涯を、本書を通してぜひ辿ってみてください。

こちらのサイトからご購入できます:ミネルヴァ書房 「高峰譲吉 トライ、トライ、アゲイン」

 

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