第25回 シドモア桜の会

ポトマックに桜を咲かせた人脈/横浜市外人墓地・山手十番館 2011年11月3日(木)

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お墓

エリザ・シドモア女史と高峰譲吉博士

 アメリカに日本の桜を…と熱望し、ついにワシントンとニューヨークの桜並木を実現させたのは、シドモア女史と高峰譲吉博士でした。高峰譲吉博士研究会としては、シドモアさんのことも広く知っていただきたいと考え、『シドモア桜の会』を取材させていただきました。
 第25回を迎えた同会は、毎年4月の桜の頃に行なわれていました。今年は、3月11日の東日本大震災の影響を受けて延期となっていましたが、この日、シドモア女史の命日に合わせて開催されました。奇しくも同日は、高峰譲吉博士の誕生日。昨年、事務局は 高岡と金沢の「献花(生誕)祭」を取材いたしましたが、今年は25年という節目の年の『シドモア桜の会』の取材です。

 『シドモア桜の会』は1987(昭和62)年に発足し、「シドモア女史と日本の桜—日米親善の架け橋となったシドモア女史」の著書がある恩地薫氏が代表を務めておられます。
献花
 当日、会員はまず外人墓地にあるシドモア女史の墓前に全員で花を手向け、その後静かに「さくら さくら」を合唱して墓参を終えました。
合唱
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エリザ・シドモア女史について

シドモア女史 1856年、米国ウィスコンシン州マディソン市生まれ。兄のジョージが在日副領事であったことから1884年に来日し、桜と日本の文化に深く感動しました。旅行家、文筆家、写真家でもあったシドモアさんは、1891年(明治24年)に「日本での人力車旅情」を出版し、日本人や桜の名所を紹介するなどの活動をしています。
写真 → 注)
 日本滞在中に向島の桜に魅せられたシドモアさんは、ポトマック河畔の埋立地に桜を植樹したいと思い立ち、日本の桜を知っていたタフト大統領夫人のヘレンさんに手紙を送るなどの活動を開始しました。
 また、アメリカで既に桜の植樹を当局に働きかけていた高峰譲吉博士がそのことを知ると、ニューヨーク駐在の水野総領事とともにヘレン・タフト大統領夫人を訪ね、2,000本の桜の寄贈を申し出ました。
 こうしてポトマックの桜並木が実現した訳ですが、1925(大正14)年、米国議会が人種差別的な「排日移民制限法」を通過させたことに立腹したエリザさんは米国を離れ、スイスのジュネーブに移住してしまいました。1928(昭和3)年、72歳で亡くなりましたが、日本政府の計らいにより、既に母と兄が埋葬されていた横浜の外人墓地に遺灰が埋葬されたのです。

里帰り桜 余談ですが、エリザ・シドモアさんの兄・ジョージは、高峰博士と同年生まれ(25日前)で、亡くなったのも同年(4ヶ月後)。二人は全く同じ68年を、接点を持ちながら共に生きた訳です。
(因に、高峰博士の新醸造法の米国特許証明書には、ジョージ・シドモアの署名があります。)
 エリザ・シドモアさんはジュネーブから母と兄が眠る外人墓地に「里帰り」しましたが、日本人である高峰博士は、ニューヨークのウッドローン墓地に眠っておられます。歴史の不思議さ、奇縁を感じざるを得ません。
(写真は里帰り桜とシドモアさんのお墓=左下隅)

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講演『ポトマックに桜を咲かせた人脈』

『シドモア桜の会』は、墓参に続いて会場を『山手十番館』敷地内にある別館に移し、石田三雄氏による講演を拝聴しました。
(写真中:『シドモア桜の会』代表・恩地薫氏、写真右:石田三雄氏)
講演
 石田氏は NPO「近代日本の創造史懇話会」の理事・事務局長を務めてこられた方で、今回は「ポトマックに桜を咲かせた人脈 − 日米間の緊張緩和の努力 − 」と題して1時間に及ぶ講演をされました。
 お話の内容は、冒頭でも述べましたようにシドモア女史と高峰譲吉博士にまつわる事柄から、アメリカに送られた桜の詳細、その背景など、詳しい資料を駆使しつつ、飽きさせない巧みな話術で、大変有意義な講演となりました。
講演
 この講演の内容は、「ポトマックの桜」と題して一冊の本にまとめられました(近代日本の創造史懇話会)。

山手十番館 講演の後は、『山手十番館』の好意により貸切となった本館レストランでの懇親会となり、フランス料理に舌鼓を打ちながらの情報交換、おしゃべりなど、楽しい時間を過ごさせていただきました。この場を借りて、『シドモア桜の会』、『山手十番館』および関係者の方々に御礼申し上げます。

 注):『シドモア桜の会』は、『シドモア桜100周年 里帰りを喜ぶ
市民の会』とは、交流はありますが、別組織です。
 注):シドモアさんの写真…米国内務省アメリカ国立公園局HPより

(取材:平成23年11月3日/文責:事務局)

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